2017年1月20日に米国次期大統領に就任したトランプ氏は、昨年11月21日に公開した米国民向けのビデオ声明で、大統領就任初日から着手する6項目のうち、真っ先に「TPPからの離脱」を挙げた。
この中でトランプ氏は、「連邦政府があるワシントンを改革し、米国の中間層を立て直す。全ての国民のために、再び米国を偉大にする」と強調した。
歴史的に見て、米国は「世界第1位」に座り続けないと、決して我慢が出来ない国柄である。米国民全員が物凄い上昇志向であり、蓮舫のような「第2位じゃダメなんでしょうか?!」的発想は全くない。
第二次世界大戦後から今日に至るまで、米国は先頭に立って国際自由貿易を強力に推進してきた。これはブレトン・ウッズ体制ともいわれるもので、国際社会の豊かさを裏打ちするものだった。とりもなおさずこの体制によって、国際社会における米国の絶対的優位を確立してきた。
国際自由貿易の進展は、各国間の相互依存を深化させ、人々を貧困から脱出させ、平和を増進すると考えられて来た。こうしたことをトランプは全く見逃している。
「トランポノミクス」とは、トランプ氏の経済政策を指し、トランプと経済政策を合わせた造語である。「米国第一主義」を掲げ、通商政策では関税の引き上げや自由防衛機協定からの離脱など保護主義的な政策を指している。
財政政策では「レーガノミクス」を意識し、法人税や所得税の大規模減税を行う。社会基盤の整備にも巨額を投じ、景気拡大や雇用の創出を目指す。企業活動を重視し、銀行の業務を制限する金融規制を緩和し、原油などのエネルギー開発を推進する。
トランプ氏の考え方の根底にあるのは「米国第一主義」である。保護主義的な主張は支持層である白人労働者の雇用を守ることにある。白人の低所得層には、米企業が賃金の安いメキシコや中国に工場を移転し、自分たちの雇用が失われたと不満を募らせている。
TPPはそうした産業の空洞化に拍車をかけるとみている。外国製品に高関税を掛ければ米国内に生産拠点が戻るとの期待もある。
大統領の通商権限は非常に強く、NAFTA離脱や特定の輸入品への関税引き上げは、議会の承認なしで可能である。米国のピーターソン国際経済研究所は、選挙期間中に主張した通商政策を実施すれば、「米国経済は不況に陥り、数百万人の雇用が失われる」と予測しているという。高関税は貿易を縮小し、不況を世界に伝播する可能性がある。
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